なぜ、海外FX業者はゼロカット(追証なし)ができて、日本の国内FX業者はゼロカットできないのですか? 目次

  1. 日本の国内FX業者がゼロカットできない理由
    1. 金融の世界では、日本の法律は世界で最も厳しい。次にイギリス
  2. 海外FX業者がゼロカットする目的 - ゼロカット義務化の法律
    1. 海外ではゼロカットではなく、ネガティブ・バランス・プロテクション
  3. 海外FX業者がゼロカットできる理由 - デメリットよりメリットが大きい
    1. 日本の国内FX業者と海外FX業者では、儲けのカラクリが違う
  4. そもそも、なぜマイナス残高が発生するのか?
    1. 海外FXのゼロカットでは、ボーナス消滅などに注意

日本の国内FX業者がゼロカットできない理由

ゼロカットとは、FXで取引口座の残高がマイナスになってしまった時に、本来トレーダーがマイナス分の損失補てんのために支払う追証を海外FX業者が肩代わりしてくれるサービスです。

わかりやすいよくあるゼロカット例は、以下の通りです。

  1. 海外FX口座に10万円を入金して、ハイレバレッジ取引をした
  2. 急に価格が下落したため、残高が-100万円になった
  3. ゼロカット対応の海外FX口座だったので、すぐに残高が0円に戻った

ゼロカット対応の海外FX業者では、上記のように追証または追加証拠金と呼ばれる100万円の借金の支払いが発生しません。

ゼロカットの詳しい仕組みやゼロカットが発生する理由、ゼロカットが何故できるのか・ゼロカットの目的などについては、本ページ後半をご確認下さい。

しかし、上記の例はゼロカット対応の海外FX業者のみです。

日本の国内FX業者は金融商品取引法という法律でゼロカットが禁止されているため、ゼロカットができない様になっています。

ゼロカット禁止について具体的な書かれている法律の条文の内容は、以下の通りです。

“第三十八条の二 金融商品取引業者等は、その行う投資助言・代理業又は投資運用業に関して、次に掲げる行為をしてはならない。

二 顧客を勧誘するに際し、顧客に対して、損失の全部又は一部を補てんする旨を約束する行為(損失補塡等の禁止

第三十九条 金融商品取引業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。

三 有価証券売買取引等につき、当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為”
– 日本の金融商品取引法

海外FXのゼロカットは、日本の法律で違法行為とされている損失補填(そんしつほてん)にあたります。

金融の世界では、日本の法律は世界で最も厳しい。次にイギリス

この損失補填にかんする取り締まりは実際におこなわれており、2019年6月に東郷証券の損失補填が発覚し当時の幹部が逮捕される事件がありました。

FX取引の損失を補填した疑いで刑事事件として立件されたのは、およそ20年ぶりの出来事でした。

少し話は脱線しますが、日本の金融商品取引に関係する法律は世界的に見てもとりわけ厳しく、世界で一番厳しいと言われるほどです。

日本の金融商品取引法の条文は一見してトレーダーにとって不都合な法律にもとれますが、国内FX業者の組織体質を矯正し、トレーダーの利益を守るための法律でもあります。

日本では25倍以下のローレバレッジに抑えてトレーダーの借金リスク減らしています。
反対に、25倍以上のハイレバレッジでFX取引ができる国や地域では、追証が発生しないゼロカットをFX業者義務付けてギャンブル性を抑えています。

日本の損失補填禁止と海外のゼロカット対応にどちらが正しいという答えはありませんが、世界的な流れとしてはローレバレッジへのレバレッジ規制の方向に動いています。

日本の次に金融商品取引の法律で厳しい国は、イギリスです。

また、日本の国内FX業者がゼロカットしない理由に金融商品取引法という法律も関係しますが、国内FX業者が利益を獲得するビジネスの仕組みも関係しています。

海外FX業者がゼロカットする目的 – ゼロカット義務化の法律

一部の国や地域の金融ライセンスではレバレッジ規制をしないかわりに、トレーダーが借金リスクゼロとなるゼロカットを義務付けているところがあります。

キプロス共和国では、2018年8月1日に金融商品取引にかんする規制を厳しくして、その一つにゼロカットの義務化が含まれていました。

そのため、ゼロカットにこだわるトレーダーは、キプロス共和国で金融ライセンス CySECを持っている海外FX業者を選ぶとよいです。
キプロスのルールがキプロス以外の国や地域に住んでいるトレーダーに適応されるとは限りませんが、基本的には全世界で同じ取引環境・取引条件を提供しています。

キプロスに拠点をもつ海外FX業者一覧

海外ではゼロカットではなく、ネガティブ・バランス・プロテクション

海外FX業者のゼロカットという名称で普及した損失補填のルールは、正式にはNegative Balance Protectionと呼ばれます。

Negative Balance Protectionの発音はネガティブ・バランス・プロテクションで、省略してNBPと書かれます。

Negative Balance Protectionは直訳すると、マイナス残高保護となります。

海外FX業者がゼロカットできる理由 – デメリットよりメリットが大きい

海外FX業者が積極的にゼロカットをする目的は、法律を守るためだけではありません。
実際に全ての金融ライセンスでゼロカットが義務付けられているわけでもありません。

少し極端な言い方ですが、海外FX業者ではゼロカットをしたほうが売り上げがあがる仕組みになっています。

ゼロカットをすると売り上げがあがる理由は、トレーダーが取引をするたびに海外FX業者が儲かる仕組みだからです。

海外FX業者の主な売り上げはスプレッドのマークアップや取引手数料です。

  • スプレッド・・・海外FX業者の利益が数ピップ上乗せされている
  • 取引手数料・・・海外FX業者に支払われる売買手数料

トレーダーが追証を恐れてFX取引をしなくなってしまった場合は、海外FX業者は利益がでなくなってしまいます。

取り立ての手間や訴訟費用がもったいないからゼロカットするわけではありません。
そもそも上記の仕組みで、取り立てや支払いのための訴訟をする必要がないからゼロカットができるのです。

日本の国内FX業者と海外FX業者では、儲けのカラクリが違う

反対に、日本の国内FX業者はスプレッドへのマークアップをしないで、かつ取引手数料を無料にすることによって、安い取引コストを目指しています。

取引コストとは、スプレッドと取引手数料を合計したFXの一回の取引時にかかるコストをさします。

参考:FXの取引コストを求める方法

それでも日本の国内FX業者が利益を出せる理由は、99%のトレーダーが負けると言われるためです。

国内FX業者の利益は、負けた99%のトレーダーの投資資金と、さらにマイナス残高になったトレーダーが支払う追証です。

海外FX業者と国内FX業者の利益のカラクリの違いを簡単な表にまとめると、以下の様になります。

STPの海外FX業者 ECNの海外FX業者 OTCの国内FX業者
スプレッド マークアップされて広い マークアップなしで狭い マークアップなしで狭い
取引手数料 手数料無料 取引ごとに発生 手数料無料
追証 ゼロカットで追証なし ゼロカットで追証なし 支払い発生
FX業者の利益 スプレッドのマークアップ 取引手数料 トレーダーが失った資産

海外FX業者にもSTPやECN、マーケットメーカーなど様々な業態があるため一概に言えませんが、簡単な表にまとめると上記のようになります。

日本の国内FX業者で流行っているゼロカットの代替手段「100%ロスカット」

日本の国内FX業者で損失補填とみなされるゼロカットが禁止される理由や原因は前述のとおりです。

そこで近年、国内FX業者ではゼロカットの代替として100%が証拠金維持率になったらロスカットする取引環境・取引条件が流行しています。

ロスカットとは、強制決済の意味です。FX業者が証拠金不足と判断して、いま以上の損失拡大を防ぐために強制決済させます。ストップアウトとも呼びます。

証拠金維持率が100%でロスカットされる場合、入金した資金のうち必要証拠金をはみ出す部分は損失となる可能性がありますが、必要証拠金分の資金を失うことがありません。

海外FX業者と国内FX業者で違う追証の意味

ここまで、マイナス残高が発生したさいに支払う借金を追証という言葉で解説してきましたが、じつは海外FX業者と国内FX業者で追証の意味と使い方が全く違うことを理解しておいて下さい。

日本の国内FXの追証とは、不足証拠金の追加という意味です。

まだ取引口座に資金が残っていてもマージンコールレベルに達すると、国内FX業者はトレーダーに継続して取引をするためには追加入金を命じます。
このマージンコールが発生した際に支払う資金が、国内FXの追証です。

そして、国内FXでマイナス残高を0円に戻すために支払う資金を、損失補填といいます

しかし、海外FXで使う追証とは、証拠金が不足しているから追加する証拠金の意味ではありません。
海外FXの追証とは、マイナス残高時に損失補填のために支払う借金のことです。

海外FXでもマージンコールはありますが、メール通知のみです。証拠金維持率がマージンコールレベルに達しても、追加入金をしなくても取引を継続できます。

そもそも、なぜマイナス残高が発生するのか?

FX取引のマージンコールやロスカットの機能を知ると、マイナス残高やゼロカットという言葉に少し疑問を持つトレーダーもいます。

  • マージンコールとは、証拠金不足を通知するアラーム。追加入金が必要な状態を指す
  • ロスカットとは、強制決済のこと。いま以上の損失拡大を防ぐ目的

例えば、マージンコールレベルが証拠金維持率の100%で、ロスカットレベルが証拠金維持率の50%とします。
必要証拠金が1万円のFX取引では、5,000円の含み損をかかえた段階で自動的にロスカットされて、残りの5,000円は取引口座に残ります。

ただし、上記の例は理想的なFX取引の例にすぎません。

ボラティリティが高い相場では、必ずロスカットレベルで強制決済されるとは限りません
強制決済をしても、場合によって約定できずに残高4,000円や0円以下のマイナス残高にまで滑ることがあります

さらにハイレバレッジ取引の時には、ローレバレッジの時と比べるとより大きな損失を被る可能性があります。

海外FXはハイレバレッジ取引が一般的なので、マイナス残高発生時にゼロカットの機能がより重要視されます。

証拠金維持率10%でロスカットというギリギリまで攻めることができる海外FX業者もあります。ロスカットレベルが低ければ低いほどギリギリまでFX取引できますが、マイナス残高になる可能性はより高くなります。

海外FXのゼロカットでは、ボーナス消滅などに注意

海外FX業者でゼロカットは、メリットばかりではありません。

海外FX業者には、国内FX業者には無いボーナスキャンペーンがたくさんあります。
ただし、ゼロカットされたときは、ボーナスの一部または全部が消滅することがありますので、ご注意下さい。

多くの海外FX業者でゼロカットと同時にボーナスが消えたり、ボーナスがマイナス残高の損失補填に充てられます

ゼロカットにデメリットはありませんが、ゼロカットされるデメリットとしてボーナス消滅があります。

また、ゼロカットを悪用した極端な指標トレードなどは、海外FX業者による口座凍結や利益没収、出金拒否の理由になりますのでご注意下さい。

海外FXと国内FXの違い(一覧まとめ)