緩和の開始から5年が経過

日銀が異次元緩和を開始してからすでに5年以上が経過した。

しかし当初「2年で達成する」と述べていた物価上昇率2%の目標が達成できないため、緩和の縮小・終了を切り出すことができないままここまできた。

これまで異次元緩和政策でやってきたこと

これまで異次元緩和政策でやってきたことはいろいろあるが、最も重要な政策は「日銀が国債を大量に買い入れ、マネタリーベースを増やしていく」というものだった。

マネタリーベースとは日本の国内に出回っているお金の総量のこと。

マネタリーベースは緩和を開始する直前の2013年3月末時点で135兆円だった。

それを2年間、つまり2015年3月末までに2倍程度、つまり270兆円にすることで、物価上昇率2%も達成できると黒田総裁は話していた。

その後マネタリーベースの推移はどうなったか?

2014年3月末には220兆円になっており、緩和の1年目で85兆円も増やしていたことがわかる。

2014年10月には消費税増税の影響を緩和するために、国債購入額を年80兆円程度に増額すると発表したこともあり2年目も順調に増え、2015年3月末には295兆円だった。

この時点で当初の目標だった「2年後に270兆円」は達成しているが、2%の方の達成が全く見えないので異次元緩和は続けられる。

2016年3月末には375兆円と、3年目もかなりのペースで買い入れが行われた。

しかし2017年3月末時点では447兆円であり、4年目の1年間で68兆円の増加とややペースが落ちた。

そして今年・2018年の3月末には、487兆円とわずか40兆円の増加に留まってしまった。

すでに事実上縮小している状態

最新の数字である2018年6月末時点では503兆円で、前年同月から35兆円程度しか増えていない。

つまり日銀は「緩和を縮小する」と発表はしていないが、すでに事実上縮小している状態になる。

緩和政策が事実上縮小している理由

この理由はいくつか考えられるだろう。

1つには2017年から景気の回復傾向が見え株価も上昇したため、以前ほど大量に国債を購入する必要がなくなってきたこと。

しかしもう1つには、これまでの長期にわたる緩和で日銀が国債を買い過ぎて、国債市場に買える国債が少なくなってきている点がある。

日銀の緩和ペースが落ちている主な理由が前者だとしたら、景気回復のためにペースを落としたという歓迎すべき変化になる。

しかし主な理由が後者の国債枯渇だとしたら、このペースダウンは歓迎すべきことではなくなる。

国債が枯渇しているためにペースが落ちているなら、それは異次元緩和の「限界」を示している。

日銀に残された手は少ない

これまで5年間も国債を大量に買い続けて、ついになくなってきてしまった。

今は景気が回復傾向にあるのでまだ良いが、今後景気が後退に向かってもこれ以上国債が買えなくなる。

そうなった時、日銀に残された手は少ないだろう。

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