近年、存在感を示しているHFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング、高頻度取引)は世界全体の取引量の半数を超えるとされています。

HFTの台頭により「ダークプール」と揶揄される私設取引システムの増加とダークプールを利用する大手投資機関はより批判の対象となり、他の一般の投資家達を犠牲にしているという意見もあります。

そもそもダークプールとは?

今や、世界最大となるまで成長したプラットフォームの通称「ダークプール(Dark Pool)」とは「見えない流動性」を示しています。

つまり、ダークプールとは取引市場の闇となる公開されないリクイディティを利用する取引環境のことです。

通常、私たちが目にすることが出来る価格は証券取引所などにおける公開価格で、公開された市場での取引価格を公平に参照し互いに価格や数量などを交渉し取引価格を決めています。

しかし、近年、公開されない私設市場「ダークプール」を通し操作された大量の注文が市場に影響を与え、公開市場で取引する一般投資家たちに不利な状況を作り出していると言われています。

HFTとは?

そして、ダークプールにからみ特に問題視されるのがHFTです。

0.1秒以下という刹那に数万を超える注文を処理するコンピュータが実現する超高速取引という取引手法ですが、特に優秀なプログラムだと、市場の値動きまでコントロールできてしまうそうです。

HFTの実践例としてよくあげられるのが、指標発表時の資料の分析力と市場への反映スピードです。

人間には到底不可能なスピードで発表指標に反応し暴騰・暴落を引き起こしているのは、実はこうしたHFTを行うコンピューターだったというわけです。

日本株式市場では、注文件数の最大6割がHFTによるものと予測されています。

HFTが生んだ新たな問題

HFTは、ネットワークの発達とともに着実に成長してきました。

しかし、やはりこれほどに力をもつシステムが注文の5割を超えるとなると、多くの歪みも生まれます。

HFTによる虚偽注文

実際に取引する予定のない注文を大量に発注することにより市場に圧力をかけ、売り買いの機会を増やすことです。

HFTの特徴は、スピードこそ力という点です。
そのため、市場で売買が急増し価格や気配値が著しい変化を示す場面で、この手法を疑う声があります。

HFTによる市場操作

「マーケット・メーカー戦略」とも呼ばれる市場操作であり、HFTが実現した取引手法です。
今やHFTの大半を占めているといわれています。

この取引手法は、市場に出ている注文に自分の注文を合致させるのではなく、自分が注文を提示した上で他の投資家の注文を待ちます。具体的には、流動性があることを知った上で、売りと買いを同時に市場のプライスあたりに出し、その差分を瞬時に利益に変えるという仕組みです。

FX・CFD市場では、HFTが狙う大きな流動性をもつのはプライス周辺の前後1pipで、その薄い利益を狙って何度も注文を繰り返し積み上げていくことになります。

東京証券取引においてHFTを利用する投資家は「優れたプログラムでも多くの人間の感情が渦巻いて形成される市場を読むことなど不可能だ」というのですが、東京証券取引側は「市場操作が疑われるような取引は1日数百件に上る。」とのことで、その相場操作の正体を暴こうと必死の人たちもいるようです。

立ち上がる金融機関

HFTの単純な問題点とダークプールの問題点について触れてみましたが、HFTにより本領を発揮するダークプールについては、世界の大手銀行からも、「機関投資家サイズのこのような不透明な取引を防ぐために、プラットフォームをさらに整備し、取引を公平な時代に戻す必要がある。」と声が上がっています。

もちろん、この巧妙に形成された匿名取引システムを乱用するHFT利用者(プログラマー)達が、一般投資家を犠牲の上に利益を得ることを黙って眺めているわけにはいきません。

世界中の大手金融企業(フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントやJPモルガン・アセット・マネジメント、バークレイズ、シティグループ、ドイツ銀行など)は立ち上がり、トレーダーの実行する投資がHFTの標的となることを防ぐ手段を探り、より公平な取引プラットホームの実現を働き掛けていくということでした。